嫌いなものを克服させるには?
好き嫌いがはっきりしてくると、献立や調理の仕方に頭を悩ますお母さんも多いことでしょう。好き・嫌いを選別する舌の構造からまずお伝えします。
大人も子どもも性別年齢関係なく人は皆、舌の表面はらざらしているように見えます。このざらざらの部分は突起状になっていて『味蕾』と呼ばれます。味を区別・判断するところで、甘味・塩味・旨味・苦味・酸味の味を味蕾が敏感に感じ取ります。主に、甘味と塩味で「美味しい」「体に良い」と認識します。苦い・酸っぱいと感じると「美味しくない」は勿論のこと、「腐っている」「食べてはいけない」と危険意識が潜在的に湧くようになっています。味蕾は、大人になるにつれ数が減少していく為、たくさん存在する子ども時代が最も味に繊細であり敏感です。子どもが口にした瞬間に「まずい」と食べ物を吐き出す仕草は、舌に食べ物が触れた瞬間、味蕾の働きで苦味と酸味を強く感じ取った為です。好き嫌いが多いということは、それだけその子が味を敏感に感じる肥えた舌の持ち主だという長所にも捉えられます。
「苦味やあくの強い野菜が大人になってから食べられるようになった」という声を聞いたことがあると思います。日々の食事機械の積み重ねの中で安全性を知る機会が増えたことから精神的な抵抗感が少し薄れ、「苦いけども美味しい」の矛盾した味覚も成立し、体が受け入れることができた変化の現れです。
嫌いな食べ物を克服させる為には、その食べ物が「美味しい」ということに加え「安全だ」という意識を子どもに芽生えさせることが重要です。安全が保証されているからこそ「美味しい」の感情が芽生え、ほんの少しでも子どもは口にしてくれるようになります。「うちの子、嫌いだから」と言って、食卓にその食材を並べる回数を少なくする必要はありません。食べるまで月日がかかっても、全く口にしない日が続いたとしても、見る経験の積み重ねでその子の嫌いな食べ物に対する安心要素を芽生えさせましょう。
「自分にとっては美味しくないと思ったのに、大好きなお母さんはとても美味しそうに食べている」という事実に、子どもは大きな衝撃を受けます。多くを語らなくてもいつも笑顔で「おいし〜い」と食べるお母さんの姿に、子どもは憧れの心を抱きます。その際「お母さんは大人だからこれの美味しさがわかるの。まだ子どもだからわからないなんて、もったいないなぁ」等と話すのも効果的です。「早く大きくなりたい」と思う子に対しては、お母さんだけでなくお父さんやお兄ちゃん、お姉ちゃん(身内時じゃなくても大丈夫です)の姿を会話に盛り込むことで、なりたい自分・目標を具現化できます。その人と比較や優劣がある言い方にならないように注意は必要です。
〇「これを食べられるようになったら、△君のようなお兄ちゃんに仲間入りだね!もっとかっこよくなるんだろうなぁ」
×「これを食べられなかったら、△君のようなお兄ちゃんになれないよ」
様々な言葉をかけて聴覚に訴えかけるよりも、子どもはまず視覚に訴えかけると効果的です。見て嫌いな食べ物について知ってもらうツールとして、絵本(なるべく図鑑出ないほうが効果的です)やお絵描きなどを取り入れてみましょう。お絵描きの時は、その物にお顔を書き加えてください。
絵本はちょっとその食べ物が登場してくるだけでも、どんなストーリーの物でも構いません。ピーマンが苦手な子は、『グリーンマントのピーマンマン』という絵本があります。野菜仲間に嫌われ者のピーマンが、みんなを助けるヒーロー『ピーマンマン』になったというお話です。嫌いな物への関心が絵本を介して次第に距離が縮まるきっかけとなり、その物に対する親近感が芽生えます。絵本を好きになったところで食卓にも登場させると、「これを食べたらピーマンマンみたいにかっこいいヒーローになれるね、ちょっとだけ食べてみない?」という誘いかけがしやすくなります。
また、出かけて本物を見に行くことも良い方法です。八百屋さんや果物屋さんに並んでいる様子を見に行ったり、畑や牧場、動物園に行ってみるのも良いでしょう。直接触れることが一番ですが引き目で見るだけでも十分です。環境が変わると、同じ苦手な食べ物でも新鮮な気持ちで触れることができます。
→ ピーマンって本当は良い奴『グリーンマントのピーマンマン』
→ 野菜に興味を示すかも『やさいのおなか』
お母さんの料理をしている様子を、危険がない範囲で子どもに見せてあげましょう。子どもが飽きたり関心がなかったりした時は、無理に見せようとする必要はありません。「これからどんな形になるでしょうか?」「どのように変身するでしょう?」等クイズのように問いかけて子どもに話しかけて関心を引くのも良いでしょう。嗅覚(におい)や聴覚(音)も刺激しながらご飯ができていく様子に、子どもはとても興味が高まります。自分の嫌いなものが形を変えて美味しくなっていく変化に、「食べてみようかな」という気持ちが芽生えてきますよ。
嫌いな食べ物がお野菜や果物だったら、苗や種を買って育ててみましょう。そこで子どもに、毎日観察する事と水やりをお願いしましょう。最初はちょっと気が乗らなくても、成長が目に見えてわかると子どもも愛着が湧いてきます。出来る子でしたら土遊びと称して、鉢にに土を入れる段階から一緒に取り組んで見ても良いかもしれません。
簡単なお手伝いをお願いして、一緒に料理をすることもお勧めです。葉野菜はちぎってもらうなど、危険のない範囲でその子に合わせた物を提案してみましょう。自分も手を加えた体験が達成感と喜びにつながり、食べる意欲も湧きます。
食べてほしいというお母さんの想いは、盛り付けの際はぐっと押し殺すことが必要です。小鉢でもプレート皿の上でも食器関係なく、一口で終わる量から始めてみましょう。克服し始めてきたら、大皿から食べれそうな量を自分でお皿に取る事も良いです。たかが一口ですが、嫌いな子にとっては大きな壁です。それで子どもが「おいしい」と食べてくれたら、「よかった、嬉しい」とお母さんが喜ぶ事が第一段階です。お母さんが喜ぶ姿は子どもにとっても喜び、達成感そのものなので、足りなかったら「もっと食べたい」と子どもの方から言ってきます。「おいしい?」と尋ねるのは良いですが、子どもがまだ何も話していないのに「もっと食べる?」とお母さんから問いかけてしまうと、子どもは「食べて欲しい」というお母さんの圧を感じ取ってしまうので、お皿が空になったら褒めてあげ、目標達成した感覚で締めくくる所から始めましょう。